要旨:『源氏物語』は日本古代後期の女流文学の代表者である紫式部によって書かれた長編小説で、日本古典文学の最高峰とされてる。紫式部は真実かつ細緻な筆致で平安朝を舞台にした貴族の贅沢な生活を見事に描いた。一般の歴史書に見られない大量な生々しい貴族世界の生活場面を後世に見せる同時に、優れた芸術価値を収め、異彩を放し、燦然と日本古典文学の最高峰に立っている。その芸術手法として、最も読者を魅了したのは各々の人物性格とその心理活動を極めて細かいところまで筆致を入れ、女性らしく繊細的に浮き彫りだすところである。紫式部は『源氏物語』の中で数多くの貴族女性のイメージを作り出し、充分に日本平安時代における女性地位の低下と運命の「無常感」を明かにした。その中で、率直に自分の愛情と恨みを敢えて表す六条御息所は最も鮮明な個性をもつ一人である。六条御息所の愛情観の考察を通じて、平安時代の貴族女性の社会的地位とそれなりの精神世界を垣間見ることができる。

本文では、平安時代における貴族女性の恋愛世界に着目し、六条御息所のことを例にして『源氏物語』の主人公である光源氏との感情葛藤を考察することによって平安時代の貴族女性が持つ特別な精神世界に対する理解を深めたい。

キーワード：『源氏物語』；六条御息所；平安時代；貴族女性；愛情観

目次

要旨

中文摘要

第1章 はじめに-1

第2章 『源氏物語』と平安時代-3

2.1 摂関体制と女流文学の開花-3

2.2 紫式部-4

2.3 平安時代の婚姻様式-4

2.3.1 近親婚-4

2.3.2 一夫多妻婚-5

2.3.3 訪婚と夫方居住婚-6

第3章 平安時代の貴族女性の精神世界について-9

3.1 『源氏物語』における女性心理の描写-9

3.1.1 求愛される段階の心理表現-9

3.1.2 発展段階の心理表現-9

3.2 仏教の影響――「生霊」と「死霊」-9

第4章 六条御息所と光源氏-11

第5章 おわりに-13

参考文献-15

謝 辞-16