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要旨:『武蔵野夫人』は大岡昇平の第一部の大衆小説である。1950年に発表され、戦後文学を代表するベストセラーとなった。この作品が出版される前に、大岡昇平は戦争を題材とした作品をもって、すでに一躍文壇に名を馳せたと言われている。小説は東京西部の武蔵野を舞台にして、武蔵野の風土と人情及び没落していく中産階級の姿を再現した。
主人公の道子はビルマから復員してきた勉と恋に落ちた。結局、勉に裏切られて、絶望した彼女は睡眠薬で自殺した。道子は社会生活であれ、家庭生活であれ、日本伝統女性の悲劇的な運命から抜け出せなかった。本論文は三つの時期の道子像をめぐって展開している。道子の一連の心理的な変化を通じて、日本の伝統女性が運命に向き合う時の弱小とためらいが読み取れる。それと同時に、小稿は第三者の視点から、家庭や社会などの要因によって、道子の悲劇的な運命について、客観的な分析をしてみた。
本論文の研究成果を簡単にまとめておくと、以下のようになる。第二次世界大戦後、昭和22年、日本は刑法による姦通罪を廃止したことを背景に、男女平等というようなブームを巻き起こした。女性の社会地位を改善されたとしても、当時の女性が相変わらず男性と従属関係であった。したがって、法律制度から見ると、戦後の日本女性は男性と同じような権利を得たとしても、男性を中心とするような社会の実情からは抜け出さなかった。道子は当時の伝統女性の縮図であると言われてよい。彼女は伝統的な美徳を備えているが、従来のモラルも突き破りたがった。ある意味で、道子の反抗は現代女性に対しては示唆になると言えよう。
キーワード:道子 女性 姦通 悲劇 戦後の日本
目次
要旨
中文摘要
はじめに1
1.大岡昇平と『武蔵野夫人』1
1.1大岡昇平の生涯2
1.2『武蔵野夫人』 3
2.心理的な変化から見る道子3
2.1初期の道子像3
2.2中期の道子像4
2.3後期の道子像5
3.第三者から見る道子像5
3.1富子の視点5
3.2夫の秋山の視点6
3.3愛人の勉の視点7
4.道子の悲劇的な運命の原因7
4.1道子の家庭背景7
4.2道子の社会関係8
4.3時代背景と政治背景9
おわりに.10
参考文献.11
謝辞.12